皆様におかれましては、ますますご発展のこととお喜び申しあげます。
　日頃は格別のご愛顧を賜り、ありがたく厚く御礼申しあげます。

　 今回は弊社設計により、本年2月に竣工しました今治市立吹揚小学校新築工事についてご紹介させていただきます。

　本施設は、今治市内中心部の子供たちのより良い教育環境実現のために、歴史ある4つの小学校（今治・美須賀・日吉・城東）を統合して今治城の西側に位置する旧美須賀中学校跡地に建設した小学校です。 「吹揚」という名称は風や潮、砂糖が下から吹き揚げる地勢に由来する言葉で、吹揚小学校という名は、この小学校が「地域に清新な風を起こす姿」を、また子供たちが「志を高く吹揚げている姿」をイメージして命名されております。 弊社は、期待に胸を膨らませている子供たちの笑顔と地域の皆様の想いを感じ、約1年半かけて新校舎とその付属棟（給食棟、プール棟、体育倉庫）の設計を行いました。

　本施設と隣接する今治城は古来「吹揚城」と呼ばれ、今治市のシンボルとして市民の方々から親しまれています。 また、今治市は世界的も有名な建築家「丹下健三」氏の地元（旧美須賀小学校卒業）で、同氏はコンクリート打放しの端正なプロポーションを持つ 建物を数多く設計し、日本の建築にも多大な影響を与える等、地域の方々から今なお尊敬されています。校舎の外観は、今治城との調和と丹下健三氏の作風を細部に至るまで意識して 柱及び梁はコンクリート打放し、手摺壁にはプレキャストコンクリート（既製コンクリート）を用いることで重厚さと雄大さを表現しました。
　平面計画では、子供たちが伸び伸びと活動でき、学年を超えてコミュニケーションが図れるよう中廊下式のブロックプランを採用しています。 採用にあたっては、自然換気のとり方や階段との関連性が重要となるため、自然換気シミュレーションで空気の流れを確認し、階段の形状も模型で十分検討する等、豊かな空間と環境作りに努めました。 またコスト削減や津波対策等防災計画にも積極的に取り組みました。
　弊社は、今後とも、最適な技術とこれまで蓄積したノウハウの活用により、お客様や地域の皆様の想いを形にするお手伝いを的確かつ誠意をもって行ってまいります。

以上

エコシャフトによる自然エネルギーの利用

　本校舎では、子供たちがオープンスペースとして交流することができる空間の確保や、子供たちの行動を常に誰かが見守ることができる教育空間を生み出すという設計コンセプトのもと、 中廊下式のブロックプランを採用しております。しかし、中廊下式は、外気に接する窓が確保出来ない為、熱がこもりやすく、この熱を上手く排除することが重要となります。
　その手法として、中廊下と連続する階段部分の吹抜けをエコシャフトとして利用することを計画しました。エコシャフトを利用した換気計画においては、自然換気シミュレーションを用いて風速分布や温度分布等の解析を行い、自然に空気が流れるよう窓やガラリの配置、換気開口サイズを決定しました。その結果、無風時でも窓を開けるだけで、教室や中廊下に快適な風を生み出せることとなり、自然エネルギーの利用によって熱負荷を効果的に低減することができました。

空間に拡がりのあるX型階段

階段の形状は、子供たちの横の繋がりだけでなく、上下の繋がりにも配慮し、動線に自由度のあるX型を採用しました。採用するにあたり、模型を作成し、空間の拡がり方や階段の納まり、手摺の形状などを検討しました。

杭工法検討によるコスト削減への取組み

杭工法の選定に際しては、一般的によく用いられるプレボーリング拡大根固め工法（A案）とプレボーリング系高支持力杭工法（B案、C案）で概略計算し、 必要な杭径、本数、施行日数等を比較検討しました。その上で安価となるC案を採用することにより、コスト削減へと繋げました。尚、校舎の配置についても既設建物の杭に干渉しないよう検討することで既設杭の撤去削減に努めました。

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